第二回関川勉強会 関川の野鳥

平成13年9月21日

講師 山本 明 先生

関川の野鳥

 関川は最上流の真川やニグロ川から日本海に注ぐ河口まで,河川部分はもとより沿線周辺にはさまざまな環境がある。河川部分の上流では大小の石が多く、下るにつれて石は小さくなって礫(石ころ)が多くなり、下流では砂地が多くなる。
 それぞれの河川敷には、草地や低木や高木の樹林状の所もあり、河原や中州の発達している所もある。
 また、河川の沿線周辺の環境は、上流部分は森林で中下流は水田・集落・市街地で、一部に草地もある。こうしたそれぞれの環境に総合して適応した野鳥が生息しまた渡来する。
 しかし、中下流の関川は野鳥の生息渡来の環境としては、比較的単調で、日本では大河川に入る信濃川と比べると、やはり鳥の種類は少ない。
 これまで(‘01年8月まで)関川では163種の野鳥が記録されている。因みに長岡周辺の信濃川では、’87年7月までに209種が記録されている。

(以下では主として関川の中下流の野鳥について述べることにする)

野鳥は関川をどのように利用しているか

1.採食地として利用

  • 魚をはじめ水生の動物を捕る鳥…水鳥類ではカイツブリ類・ウ類・サギ類・ カモ類(特に潜水採食カモ類)・シギチドリ類・カモメ類

    陸鳥類ではミサゴ(タカの1種)・トビ(主に死体)・カワセミ・ヤマセミ・カワガラス・カラス類(ハシボソガラス・ハシブトガラス)

  • 飛んでいる動物を捕る鳥…中小型のワシタカ類(小鳥類)・アオバズク(コウモリ・ガなど)・ツバメ・その他小鳥類
  • 河川敷の動物を捕る鳥…中型ワシタカ類のノスリやチョウゲンボウ(ネズミなど小型哺乳類や小鳥類)・トビ(ヘビなど主に死体)・ムクドリなどの小鳥類(主に昆虫類)
  • 河川敷や堤防の植物の種実や花(蜜)を食べる鳥…キジ・キジバト・ドバト・ヒヨドリ・カワラヒワその他小鳥類

 (これらの野鳥は河川以外でも採食している)

2.営巣地として利用

  • 地上や地上近くに営巣するもの…草地にカルガモ・キジ・イソシギ・ヒバリ・ホオアカ、砂礫地にコチドリ・イカルチドリ、崖に巣穴を掘って巣をつくるカワセミ・ヤマセミ、水の落ちる滝の裏側に巣をつくるカワガラスなど。
  • 樹上や高い草に営巣するもの…ササゴイ・キジバト・カラス類・モズ・オオヨシキリ・ホオジロなど。
  • 人工物(橋など)に営巣するもの…チョウゲンボウ(橋げた)・イワツバメ(コンクリート橋)・スズメなど。

3.塒(ねぐら)および休息地としての利用

  • 河川敷の樹木を塒として…サギ類・ムクドリその他の小鳥類
  • 橋その他人工物を塒として…チョウゲンボウ・ドバト・ハクセキレイ・スズメその他
  • 水面(主に下流)を休息地として…多くの水鳥類

 (その他樹木や人口物も休息地となり、多くの鳥が利用する)


        河川水辺の国勢調査(関川の鳥類)から

 建設省(現国土交通省)河川水辺の国勢調査の一環として,関川の鳥類について1995年(第1巡)と2000年(第2巡)の2回調査が行われた。上越鳥の会はこの調査に関わったので、その概要を記す。

1.調査法

 調査ヵ所…@河口より労災病院上手の堀の合流点付近まで(St.1) A春日山橋より上越大橋まで(St.2)B櫛池川合流点より別所川合流点まで(St.3)の3ヵ所とし、St.1では左岸でSt.2,St.3では右岸で本川内(両岸の堤防間)に出現する鳥の種類・個体数・出現環境を記録した。

 調査時期…4月下旬〜5月上旬(春1)、5月中〜下旬(春2)、6月中旬()、9月中〜下旬()、12月上〜中旬()に各1回、計5回行った。(各年とも)

2.調査結果(概要)

・相対的にみると…2回の調査の種数と個体数は表1のようで、あまり変わりはないようである。

表1 調査年の種類と個体数
調査年 種類 個体数計
1995 77(+14) 2630
2000 69(+15) 2658
(+数)は調査時外の記録

・調査ヵ所毎にみると…図1のように、種数では2回ともSt.2が多いのは、St.1やSt.3より河川環境が多様だからである。個体数でSt.1が多いのは、冬から春先まで冬鳥のカモ類やカモメ類が多いからである。
  
     図1.調査ヵ所毎の種数(左)と個体数平均(右)

・調査ヵ所別・時期別にみると…図2のように、種数では各時期ともSt.2が多く,特に春に多いのは環境が多様なため通過して行く鳥が多いからであろう。St.1が少ないのは単調な環境のためであろう。一方個体数ではSt.2が夏に多いのは、やはり多様環境で、この時期には多くの鳥が採食にやって来るからであろう。St.1で冬に目立って多くなるのは、冬鳥のカモ類やカモメ類が河口から下流に多く飛来するからである。
  
    図2.調査ヵ所別・時期別種数(左)と個体数(右)

・鳥が何処で観察されたか環境別にみると
 ’95年の結果から図3のようになった。種数も個体数も大体おなじ傾向となった。水面で観察された鳥が最も多く,次いで草地で、改変地や構造物でも少なからず観察された。
  
      図3.環境別観察種数(左)と個体数(右)

・季節移動型種数を調査ヵ所別にみると
 図4のようになったが、留鳥と漂鳥は各ヵ所ともあまり差はなく、夏鳥はSt.2に若干多いのは樹林など環境の豊かさであろう。またSt.1に夏鳥旅鳥が若干少ないのは、単調な環境のためであろう。
 
図4.季節移動型種数の調査ヵ所別比較

・関川の鳥相…2回行った河川水辺の国勢調査から、カルガモ・スズメ・ムクドリなど最も個体数が多く、次ぎにヒバリ・カワラヒワ・アオサギ・トビ・ツバメ・イワツバメ・ハクセキレイ・ハシボソガラスなどが多い。群集別にみると、水鳥類ではサギ類・カモ類・カモメ類が多く、シギ・チドリの類は記録はあるが実際は少ない方である。陸鳥類では特に多い種のグループ(科)はない。関川で繁殖している鳥は推定を含め19種、うち5種が水鳥類(ササゴイ・カルガモ・コチドリ・イカルチドリ・イソシギ)である。関川の鳥類リストにあるように、旅鳥はもちろん、その他の鳥でも渡りや移動の途中に出現している鳥も多く、関川はそれらの鳥の中継地の役割も果たしている。

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